下田の漁師の方から、「タアカアシガニ漁のカゴに入っていた」とフクロウニをいただきました。
タカアシガニ漁のカゴは、水深約300mに仕掛けてあったそうです。
「ウニ」というと殻があって固いものを想像しますが、
このフクロウニは柔らかくて、水枕の様にポヨポヨしています。
触って見たくなりますが、毒があるので素手で触っては行けません!
反口側
トゲはとれてしまったようです。
直径25cmぐらい、ホットケーキのような形になっていましたが
水の中だと表面がドームの様に膨らんでいるようです。
口側
こちらが裏側。まだトゲが残っていて、少し動いていました。
口側 近寄って
口 白く見えるのが歯
白く見えるのが歯です。
横から
図鑑やネットでフクロウニを調べてみると
イイジマフクロウニ Asthenosoma ijimaiYoshiwara, 1897
オーストンフクロウニ Araeosoma owstoni Mortensen, 1904
の記載は見つかったのですが…同定することが難しく…。
イイジマフクロウニは明治時代に東大動物学教室の飯島 魁教授の名前に
ちなんでつけられたという記載をみつけました。
先日、マリンバイオ共同推進機構(JAMBIO)の交流会で東大三崎臨海実験所に伺った時
技術職員に棘皮動物の分類が得意な方がいらしたのを思い出し
画像を添えてメールで問い合わせてみると。
イイジマフクロウニ Asthenosoma ijimaiYoshiwara, 1897 ではないことが明らかだそうです。
まず、水深300mでは沿岸性のイイジマフクロウニは生息していないそうです。
相模湾では水深18-60mに生息しているとのこと。
さらにイイジマフクロウニには棘に縞模様があるそうですが
このフクロウニにはありません。
オーストンフクロウニ Araeosoma owstoni Mortensen, 1904 の可能性ですが…
色彩が濃すぎるような…とのこと。
確かに送っていただいたオーストンフクロウニの画像と比較すると
口側は薄いピンク色で表側はもう少し白っぽいです。
生息水深は相模湾では60-135m。300mでは深すぎるよう。
しかし、反口側の大棘が細長く、湾曲していて、先端に白色帯があるので
本種の可能性が高いそうです。
また、アカフクロウニ Calveriosoma gracile (A. Agassiz, 1881)の可能性もあるそうです。
確か、1月に当センターにいらっしゃる予定なので
標本にして保存してあります。
お時間があれば、見ていただこうと思います。
マリンバイオ共同推進機構(JAMBIO)
海洋生物学分野の共同利用・共同研究の推進を目的に設立された
東京大学三崎臨海実験所内の海洋基礎生物学研究推進センター(CMB)と
下田臨海実験センターの連携組織です。